囚人のジレンマの観点でコロナウイルスを考察する

今回は,コロナウイルスと人々の行動の関係を,ゲーム理論でおなじみの『囚人のジレンマ』を用いて,考察していきたいと思います.

囚人のジレンマとは

お互いが協調すべきなのに,できないジレンマ

囚人のジレンマとは,複数人が何らかのルールに則ったある種の『ゲーム』をするときに生じるジレンマのことです.
このゲームというのは,現実世界での株取引や,市場原理,会社内での競争など,様々なものを含みます.

『囚人のジレンマ』というように,ある有名なお話でこの概念が説明できます.

囚人のジレンマのお話

ある事件で捕まった二人がいます.この二人が尋問されています.

条件として,

  • この二人は意思疎通できない
  • もし両方とも自白しなければ,双方にとってメリットとなる
  • もしどちらかが自白すれば,もう一方に大きいデメリットが生じる
  • もし両方とも自白すれば,両方とも自白しないときよりも,デメリットが大きい

この条件を満たした下の図での例を考えてみましょう.

囚人のジレンマ

もちろん最善の手は,二人とも自白しずにお互いが仲良く懲役2年の刑で済むことです.
しかし二人は意思疎通できません.

Aさん

もし,Bのやつが自白したら俺が懲役10年になってしまう.

Bさん

Aが自白して俺が懲役10年になるよりは,二人とも自白して懲役5年になった方がましだ.

さらには,もっと厄介な問題があります.
それは相手がどちらを選んでも,自分は自白する方が自分にメリットがある,ということです.

Bが自白する場合(Aさん目線)

Aさん目線で考えます.もしBさんが自白する場合,Aさんの選択肢によっての結果は上の画像のようになります.

この二つの結果を見て,Aさんの罪が軽くなるのは,Aさんも自白する選択をするということです.

Bが自白しない場合(Aさん目線)

次に,Bさんが自白しない場合の選択肢を考えます.この場合もAさんの選択によって,上の画像のような結果になります.

ここでも,Aさんにとってのメリットは,自白することです.

これがジレンマです.AさんもBさんも,本当は両方が自白しないことが双方にとって最善の結果だと分かっているのに,相手が自白するしないにかかわらず,自白することが自分にとって最大の利益になるというジレンマです.

コロナウイルスでのジレンマ

生活必需品の買い占め

トイレットペーパーに、ティッシュペーパー、コメ、パン、麺類、冷凍食品,etc

様々なものが買い占められています.これも囚人のジレンマに当てはめることができるのではないでしょうか?

こちらも,世間が買い占める,買い占めないにかかわらず,自分にとっては買い占めることが最大の利益になるということです.
買い占めることによる利益は,不安の解消だったり微々たるものですが,世間が買い占めることによって,自分が被る不利益は結構大きいです.

よって,本当は皆が普段通りの消費行動をすればなくならないものを,買い占めてしまうことによりなくなり,さらにメディアやSNSが不安を煽り,買い占めが大規模に発生してしまいます.

では,この問題をさらに深堀していきましょう.

世間という規模の巨大さ

『囚人のジレンマ』では,相手が一人でした.
それでも,自分の利益の最大化には自白つまり,買い占めをすることが正解でした.

でも,相手が被るかもしれないデメリットに対する罪悪感が少しでも生じるのではないでしょうか.

しかし,コロナウイルスでのマスクの買い占めは不特定多数の世間が行います.
そこには,見える相手も罪悪感もありません.だって皆が買っているんです.

皆で赤信号渡れば怖くない

本当は,マスクが無くて困っている医療従事者の方が大勢います.そんなものには目向きもせず,買い占めていいのでしょうか.

誰でも転売できる時代

転売も大きな問題となっています.大々的なフリマアプリでは,マスクなどの規制が強くなっています.
しかし,確実に流通経路は存在します.すべての物がインターネットに繋がる時代に,転売を全て食い止めることは不可能に近いです.

この転売で物がなくなるかもしれないという恐怖も,人々の消費行動に油を注いでいます.
転売をやっている人たちは相当暇なんでしょうね.そんな小銭儲けのために自分の魂を売るなんて,精神が腐りきっています.

適当なネット記事

この買い占めですが,トイレットペーパーがなくなるかもしれないというデマによって,発生しました.
そんな証拠もない情報が,インターネットないしはSNSで蔓延っています.
(この情報もデマかも? 嘘ですごめんなさい)

デマをピックアップすると,

  • お湯で治るというデマ
  • 納豆が効くというデマ
  • 香川県のスーパーの従業員が感染したというデマ
  • マレーシアでは,コロナに感染するとゾンビになるというデマ
  • etc

情報元

ちょっと探しただけで,こんなにも出てきました.
地球上全てのデマを合わせると,数えきれないほどになるでしょう.

先日,映画『コンテイジョン』を見ました.コロナウイルスの状況と酷似していると話題になっている映画です.
その映画で,あるブロガーが自身のブログ記事で,レンギョウを使えばウイルスが治るという記事を書きました.もちろんそれはデマなのですが,ブロガーはその記事で何万ドルと儲けました.

現実でも,デマを流す人はそれで儲けようとしているか,単純におつむが弱い人です.

デマで儲けようとする人は一定数います.

例えば,まだ価値の出ていないエナジードリンクなどを高値で売りたいとします.
初めに,エナジードリンクを適正な価格で買い占めておきます.
次に,「エナジードリンクでコロナウイルスが治った」,とか「エナジードリンクのある成分にウイルスの増殖を抑える効果がある」,とかを自身のサイトやSNSで拡散させます.
エナジードリンクが価値が高まってきたら,すかさず高値で売ります.
このようにデマを流すことで,情報リテラシーが低い人から搾取することができるのです.

まとめ

コロナウイルスにおける買い占めを,囚人のジレンマの観点から考察してみました.

なぜ買い占めに走ってしまうかを全人類共通で理解できれば,本当に困っている人に届くのは明らかです.

この記事を見れくれている方に,少しでもこの知識を共有でき,よりよい社会になる一助になることを願っています.

この記事を書くにあたって,参考にした書籍の紹介です.