ラズパイの産業利用の可能性 ~工場での生産ラインでの利用からIoT/AI活用事例を紹介

Raspberry Pi の産業用途 IoT/AIで製造現場の効率化の事例を紹介

こんにちは! けい(Twitter)です。

今回は、Raspberry Pi が産業利用でどのように使われているか、特に「工場の生産ライン」での利用に注目してラズパイでできることの可能性を探っていきたいと思います。

ラズパイの産業利用が進んでいる理由

実はラズパイの50%が産業用途!?

ラズパイは英国の「Raspberry Pi財団」によって、2012年に産声を上げました。

その後、現在に至るまでの10年の間にバージョンアップを重ねた製品が発売され、現在では第四世代のラズパイ4が主流になっています。

ラズパイは「若者がコンピュータテクノロジーを学ぶ機会を提供し、コンピューティング分野を前進させること」を目的としています。

しかし、ラズパイの本来の目的とは裏腹に、全てのラズパイの44%が産業用途として利用されているのが事実です。(ソース

Raspberry Pi 公式も産業利用を推進している側面もあり、「Raspberry Pi for industry」のページでは積極的にビジネスパートナーを募集しています。

さらに、産業利用ユーザー向けの製品である「Compute module」がラインナップされています。

2020年に発売された「Compute module 4」

ラズパイが産業利用に適している理由 / メリット

ラズパイが産業利用として優れたプロダクトである理由は以下の通りです。

  • 導入コストが安い
  • IoT/AIとの相性が良い
  • 情報が豊富にある(オープンソースハードウェア)

順に見ていきましょう。

導入コストが安い

Raspberry Pi 財団が非営利団体であるが故に、非常にコストパフォーマンスが高いことが一番の特徴です。

勿論コストを沢山かければ、信頼性が高く性能の良いプロダクトを購入することができます。

しかし、多くの企業が莫大な資金を持っているわけではなく、設備のIoT化などに何百万円もかけれるわけではありません。

そこで、コストを抑えるための代替品としてラズパイが注目されています。

IoT/AIとの相性が良い

ラズパイは豊富なインターフェースを持ち、複数のセンサーカメラを接続することも可能です。

また、有線/無線でのインターネットへの接続も可能で、IoT機器としてリッチな機能を持っています。

さらに、AIとの親和性の高いLinuxとPythonを使用することができ、簡単にAI開発環境を構築することが可能な点も魅力です。

情報が豊富にある

ネットで「ラズパイ」「Python」「Linux」という検索キーワードで調べると沢山の情報が出てきます。

これは、「Python」や「Linux」が無料であり、ラズパイが多くのユーザーに利用されているためです。

そのため、ラズパイを使用する時にトラブルがあっても情報が豊富なため対処しやすく、安心して使用することができる点もメリットです。

ラズパイを産業利用するにあたり注意すべきポイント / デメリット

ここまではラズパイのメリットを書いてきましたが、産業利用するにあたりデメリットも存在します。

  • SDカード利用の場合、壊れやすい
  • 製品の入手が難しい(半導体不足)

順に見ていきましょう。

SDカードのデータが壊れやすい

ラズパイはSDカードにOSをインストールすることが標準的な使用方法です。

しかし、SDカードは何回か書き込みすると壊れる可能性の高い記憶メディアで、産業用途としては信頼性が低いです。

ラズパイの電源を遮断する実験を行うと、20~30回程度でOSのデータが壊れて起動不可になるようです。(参考

この問題を解決をするためには、主に2通りの方法があります。

SDカード問題の解決策
  • 「Compute Module」 を使用する
  • USB接続のHDD/SSDにOSを書き込む

✅1つめの「Compute Module」は、先ほど紹介したモデルで産業利用ユーザー向けの製品です。
この製品は記憶メディアとして「eMMC」が搭載されているため、SDカードを使用する必要がありません

✅2つめの「USB接続のHDD/SSDにOSを書き込む」方法は、ラズパイ4以降のモデルでは特別な設定をせずともUSBに接続したHDDやSSDからOSを起動させることができます。
そのため、SDカードを使用せずに安全にラズパイを使用することができます。

製品の入手が難しい(半導体不足)

2022年現在、半導体不足が2年以上も続いています。

ラズパイも半導体不足の影響をもろに受けており、どのショップでも在庫0がデフォルトの状態となってしまっています。

そのため、産業利用となるとまとまった在庫が必要になりますが、それが厳しいのが現状です。

生産ラインの効率化!? ラズパイで「見える化」の事例4選

それでは、実際にラズパイを利用した生産ラインの「見える化」の事例を4つ紹介していきます。

古い設備をIoT化!? 電流センサーで稼働率監視

記事:町工場の稼働率を60%から80%にした10万円IoTキットーーIT導入の成功は「導入前」にあり?

工場をIoT化しようとしたときにネックになるのが老朽化した設備です。

古い設備にはデータを取得できる機能が付いていないことがほとんどで、IoT化するには追加で外側からデータを吸い上げる必要があります。

そんな時に活躍するのが、ラズパイと電流センサーです。

老朽化した設備にラズパイと電流センサの「10万円IoTキット」を投資することで、生産性能の向上を図りました。

主な成果
  • 古い設備の稼働率を「見える化」
  • 「見える化」により今まで報告されていなかった「チョコ停」が明らかに
  • 設備の稼働率が60% → 80% 大幅UP

ラズパイ+光センサで「パトライト」から稼働率を取得

記事:町工場がIoTで生産業務を大幅に改善。約3億円の設備投資と約1億円の労務費削減

こちらも先ほどと似た事例で、古い設備をIoT化する取り組みです。

この取り組みを行っているのが「旭鉄工」で、ラズパイ活用事例では一番有名です。

旭鉄工には数千の設備があり、その中でも10%が「昭和の設備」でした。

それらの老朽化した設備見える化を「初期投資を安く」実現したのがRaspberry Pi の利用でした。

パトライトを「光センサ」の利用により、稼働率の取得を実現しました。

パトライトのない古い設備には、「磁気センサ」を利用しました。

これにより、センサからの「パルス信号」を取得し、パルスの数から生産個数を、パルスの間隔からサイクルタイムの割り出しに成功しています。

主な成果
  • 切削ラインの出来高が69%向上
  • 不良率が20分の1
  • 3億円の設備投資と1億円の労務費を削減

アナログメータの読み取りをラズパイの「画像処理」により実現

参考資料:IoTによる製造ラインの監視と生産性向上の取り組み

こちらの事例も元々データを取得できる機能がついていない設備を、外側からデータを吸い上げる取り組みの一つです。

データの取得方法として、「画像処理」を利用しています。

画像処理はAI/IoTとの相性がいいため、多くの企業が導入やそれに付随したサービスを展開しています。

また、画像処理はラズパイとも相性が良く、低コストで導入を行える点が魅力です。

加速度センサ+ラズパイでAI異常検知システム

参考資料:産業用ラズベリーパイとMEMSセンサを活用した設備故障兆候検知システムの開発 | ジュンツウネット21

「異常検知システムは、製造業におけるAI活用の取り組みとして注目されています。

設備の異常検知を行うことで、機械の故障を未然に防いだり、過剰な機械のメンテナンスを防いだりすることが可能になります。

異常検知は「センサー」を通して行われます。
機械の振動を検知する加速度センサー機械の異音を検知する音センサー(マイク)などが良く用いられます。

加速度センサーにより取得した機械の振動を、パターン認識やAIアルゴリズムなどを用いて異常を数値化します。

その異常値が閾値以上であれば異常であると判断します。

生産ラインの自動化の事例2選

次に、生産ラインの自動化をラズパイを用いて行っている事例を2つ紹介します。

ロボットと組み合わせた”電動からくり装置”

参考資料:自動車工場向け“電動からくり装置”を新たに展開

ラズパイ「小型協働ロボット」「センサー」を駆使した設備を製作している事例を紹介します。

上の画像にあるように、シューターをラズパイで”電動からくり”にしたり、AGVの制御コンピュータとしてラズパイを活用したりしています。

このように、機械+電気でロボットの制御もラズパイで行い、生産ラインの自動化を図っている取り組みです。

外観検査と自動仕分けをラズパイ×ロボット×AIで実現

参考資料:ラズパイとロボットアームで農業自動化——GRIPS、トマトの自動仕分けシステムの実証実験を実施

こちらの事例は「AIによる外観検査」と「小型ロボットアーム」を組み合わせて、トマトの状態によって仕分けを自動化するシステムです。

ラズパイが1つあれば、カメラからの情報による画像認識AIと、ロボットアームの制御を一緒に行うことができます。

これにより、省コストで自動仕分けを実現しています。

番外編 ~こんな身近にもラズパイが使われている!?

最後に番外編として、身近に使われているラズパイの事例を紹介します。

実は、普段私たちが利用している“とあるお店”でもラズパイを利用する取り組みが行われています。

その企業とは、、、

そう、あの大手回転ずしチェーン、「くら寿司」です。

くら寿司の美味しさは、実はラズパイによって守られていたんです。

参考資料:TensorFlow 事例 : Coral を⽤いて回転寿司の会計を⾃動化するくら寿司

何に使われているかというと、

お皿を守る”抗菌寿司カバー「鮮度くん」”に付いている、「QRコード」を画像処理により識別しているんです。

具体的には、QRコードを読み取ることによってどの席で何のお皿が取られたかを自動で集計し、会計を効率化しています。

くら寿司に行ったら、ぜひ「注文端末の裏側」を覗いてみて下さい。