脳はただの電気現象なのか

脳の電気現象

映画『マトリックス』でモーフィアスが放つ言葉,

現実とは何だ?“現実”をどう定義する?感じるとか、匂いをかぐとか、味わうとか、見るとかを現実とするなら、現実とは君が脳で解釈した電気信号にすぎん

出典『マトリックス』

と言うセリフがある.今回はこのことについて話していこうと思う.

脳の中で何が起こっているのか

皆さんが今この記事を読んでいるとき,脳の中でどのようなことが起こっているのだろうか.

あなたは今,①記事を読む,②記事の情報から思考する,といことを行っている.

これらは,果たして神秘的なもので,霊や神と同じような超自然的な現象として片づけられてしまうのだろうか.

これまでの脳科学の研究より,脳が情報を処理するときに,脳に電気が流れていることが分かっている.

そう,今あなたの脳には電気が流れているのだ.

これは何も驚くことではない.健康診断の時などに心電図を経験したことがあるだろう.この心電図の”電”という字は,電気という意味だ.つまり,あなたの心臓にも電気が流れているのだ.

まだまだこれだけではない.筋肉を動かすときにも電気信号が流れる.これは,筋電図と呼ばれるものである.筋肉に伝わる神経の電気信号を読み取った,筋電義手と呼ばれるデバイスも開発されている.

人間を含め,生物の体の中では電気現象があちこちに見られるのだ.

電気の担い手はイオン

電気,と聞いて何を思い浮かべるだろうか.

ほとんどの人は,電気は金属に流れ,ゴムにはほとんど流れないという認識があるだろう.

この金属に流れる電気というものは,”電子”というものがある方向に流れるために,「電気が流れた」という表現をする.

さらにかみ砕くと,電子はマイナスの電気を持っている.そのマイナスの電気が動くと,「電気が流れる」.

つまり,プラスであれ,マイナスであれ,電気を持ったものが動けば,「電気が流れた」というのである.

人体は金属ではない.つまり,自由に動き回る電子はない.よって,電気が流れるためには電子以外の担い手が必要である.それが,イオンである.

人体の神経細胞には,カリウムイオンK⁺や,ナトリウムイオンNa⁺が移動することによって電気の担い手をしている.

これらのイオンが移動することで,脳や心臓,筋肉などから電気が発生しているのである.

魂は存在するか

魂には21グラムの重さがあると言われている.

あなたに魂はありますか?

そう聞かれると,もちろんあると答えるだろう.しかし,本当に魂と呼ばれるものは存在するのだろうか.

脳の中では電気現象,つまり神経細胞の”発火”が起きている.それらは,手を動かす領域,視覚情報を認識する領域,記憶をする領域などと,脳の部位ごとに発火する場所を分けることができる.

逆に,外部から脳に電流を流すと,その部分の神経細胞が発火し,その部位での変化が現れる.例えば,手を動かす領域を刺激すると,手が実際に無意識で動いたり,視覚情報の領域を刺激すると,フラッシュや黒い点が見えたりする.

また,この電気刺激を用いてうつ病の治療にも用いられている.

NeuroStar-MOA-Illustration.jpg (400×225)
https://neurostar.com/ja/how-neurostar-works/

うつ病の治療,つまり気分の操作も可能ということである.この技術が今後も進めば,さらに複雑な情動や,病気の治療につながるだろう.

ここで,魂の定義を見てみよう.

肉体とは別に精神的実体として存在すると考えられるもの[1]。肉体から離れたり、後も存続することが可能と考えられている、体とは別にそれだけで一つの実体をもつとされる、非物質的な存在のこと[2]人間が生きている間はその体内にあって、生命精神の原動力となっている存在[2]人格的・非物質的な存在[3]。個人の肉体や精神をつかさどる人格的存在で、感覚による認識を超えた永遠の存在[4]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%8A%E9%AD%82

魂とは,肉体とは切り離された精神的実体である.

しかし,精神的実体に思考や情動が含まれていると考えるならば,現に電気現象として肉体的に観測することができる.

嬉しい時,悲しいとき,眠っているとき,脳には特有の脳波と呼ばれる電気現象が存在する.これらは,精神的実体が電気現象という物理現象で説明できるということではないか?

現時点の科学では,脳の活動をすべて説明できるものはない.優れた脳を持つ科学者であっても,脳のことがすべて説明できないのだ.

脳科学へのいざない

筆者自身も脳科学について勉強中である.今回は,脳に少しでも興味を持って下さった方に,こってりした本ではなく,読みやすいものを厳選した.ぜひ,私とともに脳科学の知識の海に飛び込もう.

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