となっている方に向けて,電波の発生原理を解説したいと思います.
少し難しい話なので,主に電磁波工学などの授業を受けている理系大生向けの記事です.
目次
マクスウェルの方程式のおさらい
ネットで「アンテナの原理」と検索すると,たいていマクスウェルの方程式だけで解説しようとしています.
しかし,それだけでは電波の波形の説明ができないんですよね.
マクスウェルの方程式は万能ですが,未知数が多すぎて,具体的なイメージがつかみにくいです.
↓この記事を前提に解説していくので,まだ読んでいない方は読んでみて下さい.
マクスウェルの方程式からの電波の発生原理
これが色んな記事で解説されている方法です.
真ん中の水色がアンテナだと思ってください.ここではダイポールアンテナのようなものを想像しています.
赤色の輪っかが電場の回転,青色の輪っかが磁場の回転を表しています.
緑色の番号の手順に沿って,発生原理を説明します.
①:電荷の移動(電流)による磁場の発生
まず,前提としてアンテナの中で電荷の加速が起きる必要があります.これがアンテナに交流電源が用いられる理由です.
その電荷の加速によって,電流が発生します.
次に,その電流によって磁場の回転が生まれます.
これはマクスウェルの方程式①の,アンペールの法則の拡張の式です.
②:磁場の変化に伴う,電場の回転の発生
先ほどの磁場の回転が生まれたことにより,空間に磁場の変化が発生します.
この磁場の変化は,マクスウェルの方程式の②の,ファラデーの電磁誘導の法則により,磁場の変化を妨げる方向に電場の回転を生みます.
③:電場の変化(変位電流)に伴う,磁場の回転
マクスウェルの方程式の①より,電場の変化は「変位電流」と呼ばれる,電流と等価として扱うことができるのでした.
つまり,空間内の電場が変化すると,磁場の回転が生まれます.
式①より,向きは電場の増加する向きに右ねじの向きです.上の画像が向きを示しています.
ネットで,「電波の原理」と調べると,上の画像が出てくるのですが,ほとんどがここの部分が反対方向を向いています.なぜか,「電場の変化を妨げる方向」という,意味不明な理論が乱立しています.
なぜそのようになっているかを考察すると,③の方向を逆向きに解釈することで,電波の発生を説明できてしまう気になっているだけだと思います.
マクスウェルの方程式の発生原理だけでは,下の図のような平面波の伝搬が説明できません.
マクスウェルの方程式は定性的な理解を助けるだけで,実際の振る舞いはより厳密に考える必要があります.
電波の振る舞いを考えるにあたって,「光速」はあまりにも早すぎます.
そこで,光速を落として電子の変化のスピードも落とした場合を考えると,理解が深まります.
電気力線での,電波の発生原理
まず初めに,こちらの方の動画を見て下さい.
この動画は神です.今まで電波の原理が分からなかった方は,こちらの動画でモヤモヤが解けると思います.
電磁波とは場のうねりである
「電気力線」は電荷からの電場の伝わる方向を示している線です.電気力線の密は電場が大きいことを,疎は電場は小さいことを表しています.
つまり方向と大きさの情報を持つ,ベクトルです,
ここで,電気力線は一瞬で伝わるのでしょうか?
また,重力は一瞬で伝わるのでしょうか?
答えはNoです.この議論に終止符を打ったのがかの有名なアインシュタインです.アインシュタインの相対性理論によって,場の伝搬は光速を超えることはないと証明されました.
つまり,電場という場は光速で伝わるということです.電場を高速に振動させることによって,場のゆがみを生じさせる,それが電磁波です.
しかし,それを実際に目で確認することは不可能です.
そこで,上の動画のようなシミュレーションが役立ちます.電気力線を伝わる速度(光速)を遅らせ,電荷の振動するスピードを遅らせることで,人間の目で確認することができます.
実際にはアンテナなどに使う周波数は一秒間に10億回くらいです.(1GHzく
光速に対して,振動が遅すぎるとどんどん波長が伸びていきます.
電場と磁場のうねり
先ほどの動画で,電荷を上下に振動させる場面を見てみようましょう.電荷が振動している場所が,アンテナを表しています.
これがまさにアンテナからの電波の放射原理です.
電場のうねりが伝わっています.この電場の変化に伴い,マクスウェルの方程式のアンペールの法則の拡張の式により,変位電流が磁場の回転(うねり)を生みます.
電波は,すべては電荷の振動から始まります. なぜなら,単一の磁荷は存在しないからです.
電荷の振動によって電場のうねりが生じ,それが磁場のうねりを生じさせる,それが電波の原理です.
学校で電磁波について習うけど,具体的なイメージが沸かないなー